10+1アンケート2013を振り返る

fig.1
ビエンナーレ・レクチャー・シリーズでの著者講演風景
9月24日ブエノスアイレス レコレタ文化センター・オーディトリアム



ビエンナーレ展覧会 著者模型パネル展示風景
9月19日─10月15日 レコレタ文化センター ブエノス・アイレス
[2]──2014年の(ご自身が関係されるものも含めて)ご関心のあるプロジェクト──作品・計画・展覧会・書物・シンポジウム・イヴェントなど──

2013年の秋ブエノスアイレス国際建築ビエンナーレに招待された。このイヴェントは今年が13回目。日本からは私が参加し、3週間の展覧会と1週間のレクチャー・シリーズが行なわれた。レクチャー・シリーズには世界各国から50名近くの建築家が招待され、連日一人50分のレクチャーが連続して行なわれた(ちなみに私の前に話したのは元モルフォシス主宰者マイケル・ロトンディだった)。展覧会はブエノスアイレスの中心にあるレコレタ文化センターで大々的に行なわれ、模型、パネルなどが所狭しと展示された。場所がらアジアからの参加は少なく、南北アメリカ、ヨーロッパが大部分を占めていた。
これだけ多くの建築家の作品を一遍に見てその語りを一時に聞くと言う機会はめったにない。久しぶりに建築のさまざまな側面、そしてそれに基づく多くの主張に触れ、日本で語られている建築はその一部でしかないということを再認した。 建築は今後さらにグローバルな流れを加速するだろう。一方でその流れに抵抗するローカルな価値が再評価されていくこともまた事実である。グローバルな視野のなかでローカルな価値を語ること、すなわち背景の異なる世界の人々のなかで自分の考えを理解してもらうことが今後ますます重要になるであろうと感じるイヴェントであった。

[3]──2020年に開催が決定した「東京オリンピック」について、考えたこと、考えていること

秋にブラジルに行って多くの学生たちと話をしたところ、彼らは必ずしもオリンピックを歓迎していないことを知った。なぜかと言えばオリンピックが貧富の差こそ助長するものの生活を豊かにすることに寄与しないと見ているからである。その理由として施設への過剰投資を挙げていた。経済が上り調子の国においてすらこうなのだから経済が横這いの国でのオリンピックはそれなりの工夫が必要である。今回の計画は、レガシーの活用、コンパクト化などがコンセプトで謳われ、予算も低く抑えられ、そうした配慮を感じさせる。しかし最終支出は予算の数倍になるのがつねである。それらを考えあわせると、レガシーゾーンの中心を建て替えるというこの計画のへそにやや違和感を覚えてしまう。それは、景観の問題もさることながらコンセプトに反するし、コスト増にもつながるからである。せっかくいいコンセプトをつくっているのだからそれを徹底したらいいのではないか。企画倒れにならないことを祈っている。

10+1webサイト2014年1月号所収