可能性の包容

(3)希薄な密度感/空

 ロスアンジェルスの代名詞のように言われる青い空は年間を通じた暖かさと、雨の少なさに起因するのであるが、それだけではない。絶対的な天空率の高さによるところが大きい。

 局所的に存在するスカイスクレーパーを除きこの都市には高い建物が少ない。そして都市の中を歩くことのないこの街では、そんな場所でさえも車で瞬時に通り過ぎてしまう。だから空が狭小に見えることがほとんどない。そもそもこの地では、50年代半ばまで150フィート(約45メートル)を超える建物は28階建ての市庁舎以外許可されていなかった*2

 そして一般にロスアンジェルスの道は路上パーキングが可能なように歩道側の両側二車線はパーキングスペースでありその内側に通行用の車線がある。よって二車線の道でも四車線分の幅がある。そして歩道がありパームツリーの並木がありその上普通は6〜7メートルのフロントヤードがある。車で住宅街を通り抜ければ、建物のファサードは見えにくい。見えるのは、道と車とパームツリーと空である(図6、7)。

 更に空に向かって視界を広げる重要な要素がある。ロスアンジェルスを空から見るとよく分かる。至る所に巨大な駐車場が見える。象徴的なのはドジャーススタジアムである。スタジアムの周囲直径約700メートルが駐車場である。スタジアムの直径が約200メートルであるから、スタジアム面積の10倍以上が駐車場である。これは野球場という特殊な施設に発生した特異な現象ではない。この都市にある殆どのスーパーマーケットの周囲は同様の状態にある。もちろんこれほど大きな駐車場ではないものの100台200台収容できる平面駐車場がここかしこにある。もちろん過密地帯では、立体駐車場もなくはない。しかし、それはダウンタウンや、サンタモニカ、センチュリーシティーといったごくわずかな場所に限られる。そしてそうした過密地帯にも5〜60台収容できる青空駐車場がある。

 建物の低さと、道の広さ、車という道の真ん中を通る装置及びそれを停める駐車場という都市のファブリックを虫食い状に食い荒らす施設によって空は圧倒的に視界を埋めていく要素となる。

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