Dialogue 建てるということ


 多木  現代世界が一番めちゃくちゃなのは、あした戦争が始まっても不思議ではないところです。理想主義という場合、そこまで押さえている必要があり、それに反対する立場をとることを含んだ理想主義です。だから、それがないと、理想主義は明らかに全体主義的になりえる可能性を持ちえる。

 奥山  戦争の問題もありますし、政治の問題もありますね。戦争までいかなくても、戦争に近いような政治があるわけです。

 多木  現に身の回りにあるわけです。もうひとつ、これは建築が解決できるとは思わないけれど、いま人間の平等が失われていて、不平等がものすごく広がっている。だから、人権もどこかに行ってしまった。そういったことまで視野に入れた上で「理想主義」と言ったのですが、そういう理想主義はどこかで持つべきです。情報社会が人間に及ぼす影響と同時に、政治や経済や人間の存在の問題が建築に影響を与えると思います。それを解決する答えを建築の形であらわすことを言っているのではなく、そういうものなしにやると、いつまでたってもメタ言語は生まれてこないという気がするわけです。
 こんなことを言うとばかにしか聞こえないような言説ですけれど、僕はどうでもいいからそういうことを言いますが、建築の世界では、そこがあるかないかは情報社会を考えることと同じくらいのウエイトである。今人間も社会もおかしくなっているわけで、その中で建築をつくることは、人類の能動的な活動に意味を与えることができるかどうかという瀬戸際まで来ているわけです。

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